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「ねぇユーリ、お菓子はいかが?」
そう言って自らを指差した男がにっこり笑う。
いつものことだ。ほんの軽い冗談は、けれどいつだって半分本気だ。
腹が減っても美味しくなければ口にしない、彼はそういう吸血鬼だったから、もしもその日がハロウィンでなければいつものように相手にされなかったかもしれない。
人が勝手に決めた祭日に感謝しながら透明人間は喜々として包帯を解き、トリックもトリートも言わずお菓子を手に入れた吸血鬼の口から犬歯が覗いた。
痛みは恍惚だった。
しかしそれも瞬く間に終わった。
まだ意識もあれば心臓も動いている。
「キミはいつになったらボクを食べ尽くしてくれるの?」
そう言って拗ねたような顔をした男が唇を尖らせる。
いつものことだ。ほんの軽い冗談は、けれどいつだって本気だ。
すると吸血鬼は決まってこう返す、
「お前はたまに齧るくらいが丁度良い」
そうして今年も、ユーリの隣にスマイルが居る。
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