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vector…1/動径、方向量 2/方向、針路 3/動因、影響力
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絶え間なく降り注ぐ雪が、世界中で鳴り響く全ての音を包み込んで消えていく、とても静かな夜だった。
暖炉の傍に横たわる子供は、赤い炎に照らされて、きらきらと輝いていた。
ベッドへ運ぶために抱え上げると、それは酷く温かで、柔らかで、とても重たく感じられた。
幼子を抱える彼にとって、それはたぶん、この世の何より尊くて、神聖なものだった。
誰もその子の名前を知らなくても、彼だけは知っていた。
彼にとって、その名前はとても特別なもので、例えば誰かが言うところの、神様みたいな意味によく似ていた。
何故ならその子は、死んだように生きていた彼へ、生きる意味と愛を与えた、まるで救い主のようなものであったから。
だから彼は、人々が自分達の神様の生誕を祝う日に、その子へ祈りを捧げる。
これから先もこの幼子が、こうして心安らかに眠ることが出来ますように、と。
彼の腕の中で、子供は穏やかに眠っている。
まるで、天国のように、安らかに。


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きよしこの夜をスマユリ的に訳してみようとしてみた。




 
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「ねぇユーリ、お菓子はいかが?」
そう言って自らを指差した男がにっこり笑う。
いつものことだ。ほんの軽い冗談は、けれどいつだって半分本気だ。
腹が減っても美味しくなければ口にしない、彼はそういう吸血鬼だったから、もしもその日がハロウィンでなければいつものように相手にされなかったかもしれない。
人が勝手に決めた祭日に感謝しながら透明人間は喜々として包帯を解き、トリックもトリートも言わずお菓子を手に入れた吸血鬼の口から犬歯が覗いた。
痛みは恍惚だった。
しかしそれも瞬く間に終わった。
まだ意識もあれば心臓も動いている。
「キミはいつになったらボクを食べ尽くしてくれるの?」
そう言って拗ねたような顔をした男が唇を尖らせる。
いつものことだ。ほんの軽い冗談は、けれどいつだって本気だ。
すると吸血鬼は決まってこう返す、
「お前はたまに齧るくらいが丁度良い」
 
そうして今年も、ユーリの隣にスマイルが居る。
 

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「ねぇユーリ、にゃんと一声鳴いてみせてよ?」
そんな要望が彼に通るはずもない。
黙したまま古びた紙に視線を落とす彼は、どうやらスマイルの声を聞こえなかったものとしたらしい。
そんなことも分かり切っている。
だから次は、彼の手から本を取り上げる。
それから中身を覗いて一秒、興味を失くして床へと落とす。
すると、麗しい容貌はぐしゃりと歪み、鋭利な視線が漸くスマイルを捉える。
なんて綺麗な深紅だろうか、繰り返し同じことを思うけれど未だに飽きはしない。
「今日って猫の日なんだよ、知ってた?」
こんな情報も彼にとっては何の意味も無い。
そしてこの状況にとっても。
手触りの良いことを知っている白銀の髪へ触れようと手を伸ばし、それを払い落される。
柔らかなことを知っている白磁の頬へ触れようと手を伸ばし、それも払い落される。
唇も首も、どこであろうと許されるはずもない、だから払い落そうとして触れた細い手首を掴む。
「触れるな、不愉快だ」
ユーリは至って静かにそう告げながら、威嚇のように犬歯を見せた。
スマイルはこわいこわいと笑い、両手を上げて降参のポーズを見せた。
突き刺さるようだった双眸は重く逸らされ、それきり相手を見ようともせず立ち上がった吸血鬼は、その場からするりと立ち去った。
「ユーリってほんと、猫みたいだね」
今日という日を多少なりとも楽しんだスマイルは、満足そうに笑う。
ああでも、引っ掻き傷の一つくらいは残してもらってもよかったかな。
そんなことも思ったけれど、こぼしたミルクを嘆いても無駄だ。


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「本当は愛なんて不確かなもの、信じてない癖に」
呟いた吸血鬼に表情は無かった。
目の前の笑顔が張り付いていると感じた、午前二時のことだった。
透明人間の笑みは崩れることも無く、その口角は綺麗な角度を保っている。
彼にとってはそれが常態のようなものであるから、もしかするとそれは表情が無いことと大して変わりないのかもしれない。
「でも、そんなよく分からないものが無いと生きていけないでしょう、キミは」
愛を囁く時と同じ顔をして彼が言った。


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なんだか忙しかったです。
そしてまた忙しいです。
体力がほしい。


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久しく嗅いでいない煙草の臭いがして、思わず足を止めた。
街角の雑踏の中、どこからしたのか、誰のものだったのか、分かるはずもない。
人波とはよくいったもので、知った顔の無い人々の顔はどれも同じもののように見え、流れるように脇をすり抜けていく。
広大な海の中へ落とした針を探すことは不可能である、と言っていたのは誰だったろう。
記憶の奥に仕舞い込んだ遠い日の紫煙が、視界を掠めて消えていった。


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Kユリ
のつもりで書いていましたが、
名前もなにも一切でてこないので、
お好きなキャラでどうぞ。
というやつですね。

ちなみに、
海の中に落とした針うんぬん
は、大好きなマンガの中に出てきたものを
お借りしているのですが、
これって正しくは
「藁の中から針を探す」というのだそうです。
アメリカのことわざだと
「干し草の中から針を探す」というらしい。
どうりで探しても探しても
出典元が出てこないわけだよ…
でも藁より海のほうがなんか好きだ。

ついでにいうと、
マンガでも不可能とまでは言ってない。
そう思っていたのに
あなたとめぐり会えました的な言い回しでした。
無理だと決めるのはいつだって自分自身だしね。



 

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